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卵管留水腫や粘膜下筋腫に伴って、着床に重要な因子HOXA-10の発現抑制がみられることを示した論文

ARTには生存能力の高い胚、適切な移植、受容能のある子宮内膜、正常子宮、着床に必要な因子の存在が必要です。
最上の胚であっても、子宮環境が適切でなければ正常な着床と胎盤形成に至ることはありません。子宮内膜症によっても子宮内膜の遺伝子の発現に変化が引き起こされることがあります。

卵管留水腫や粘膜下筋腫に伴って、着床に極めて重要な因子であるHOXA-10の発現の抑制がみられています。一定の大きさの粘膜下筋腫が存在すれば、それはIVF前に除去しておく必要があると考えるものが多く、正倍数性の胚を移植しても生児出産に至らない症例には、慢性子宮内膜炎などの問題も考える必要があります。

Introduction:Examining the many potential reasons why euploid blastocysts do not always result in viable pregnancies (and deliveries)part2
David R.Meldrum,Dominique de Ziegler
Fertil Steril.2016 Apr;105(4):841-843
【文献番号】r01800(着床、子宮内膜、サイトカイン、遺伝子、内分泌環境、薬物療法)

ARTには生存能力の高い胚、適切な移植、受容能のある子宮内膜、正常子宮、着床に必要緒な因子の存在が必要である

ARTで生児出産を得るためには、まず1つ目は生存能力の高い胚を正確に子宮腔の適切な位置に移植する必要がある。2つ目は子宮内膜に受容能があり、さらに胚の発育段階と同調していなければならない。3つ目は子宮が生理学的に、また解剖学的に適切な状態でなければならない。4つ目は正常な着床や胎盤形成を損なうような因子が血中に存在していてはならず、子宮内膜の受容能を得るために必須な特異的因子が欠如していてはならない。
このような条件を考え、胚と子宮の相互関係について考えてみる必要がある。

最上の胚であっても子宮環境が適切でなければ正常な着床と胎盤形成に至ることはない

生存能力の高い胚の産生に影響を与えるいろいろな因子についてすでに述べた。良好な胚は子宮内膜との適切な応答に反応することができるが、最上の胚であっても子宮環境が適切でなければ正常な着床と胎盤形成に至ることはない。体外受精の限界は複数の胚を移植することで代償することができるが、多胎妊娠などのリスクを伴い多くの患者にとって望ましいことではなく、現在では単一胚移植が主流となってきている。

子宮内膜症によっても子宮内膜の遺伝子の発現に変化が引き起こされることがある

子宮内膜症を有する患者においては子宮内膜に異常を認めることがある。さらに子宮内膜に炎症性所見が認められたり、プロゲステロンに抵抗性を示したりすることもある。子宮内膜症の存在が現在行われている不妊検査では検知できないこともある。卵巣刺激に伴って子宮内膜にいろいろな遺伝子の発現が引き起こされるが、また、子宮内膜症によっても子宮内膜の遺伝子の発現に変化が引き起こされることがある。移植の時期をずらすことによって子宮内膜の感受性を確保することができることがある。

卵管留水腫や粘膜下筋腫に伴って着床に極めて重要な因子であるHOXA-10の発現の抑制がみられている

Daniela Gallianoは、生児出産を損なうような子宮の構造異常についてレビューしている。特に関心がもたれる点は卵管留水腫や粘膜下筋腫を認める場合、解剖学的異常の存在部位と離れた部位においても着床に極めて重要な因子であるHOXA-10の発現の抑制がみられたことである。無作為対照試験において子宮腔の中に存在している部分が50%未満の粘膜下筋腫は妊娠率の有意な低下には結びつかないという結果も得られているが、統計的パワーが極めて低いのが問題とされている。

一定の大きさの粘膜下筋腫が存在すれば、それはIVF前に除去しておく必要があると考えるものが多い

多くの臨床家は一定の大きさの粘膜下筋腫が存在すれば、それはIVFを施行する前に除去しておく必要があるという考えを有している。子宮筋腫のネガティブな影響は選択的プロゲステロンレセプターモジュレーターであるulipristalによって抑制されるのではないかとも考えられているが、まだアメリカにおいてそのような治療は承認されていない。

正倍数性の胚を移植しても生児出産に至らない症例には慢性子宮内膜炎などの問題も考える必要がある

Etorre Cicinelli は子宮内膜炎ろいう難しい問題に関してレビューを行った。この慢性子宮内膜炎の診断にはhysteroscopeが有用と考えられている。慢性子宮内膜炎に関わる特異な細菌に関する報告もあるがさらに検討を進める必要がある。技術的には問題がなくなるまでは当面の治療は経験的なものに留まっている。正倍数性の胚を移植したとしても生児出産に至らない症例においては、慢性子宮内膜炎のような問題についても考えてみる必要がある。

胚移植の方法も妊娠率や子宮外妊娠の発現率に影響をもたらすことから慎重な胚移植が勧められる

Bill Schoolcraftは、超音波ガイド下の胚移植についてレビューを行っている。メルボルンにおける2つの機関の一方は妊娠率は低く子宮外妊娠の発現率が高かった。他方のMonash大学では慎重な胚移植が試みられていたが、それが結果に差異をもたらしていたとも思われる。

ゆっくり発育した胚は卵巣刺激で亢進した着床期ウィンドウから外れて移植されることもある

SimonとScottは胚と子宮内膜の同調性という重要な問題についてレビューしている。ゆっくりと発育した胚は卵巣刺激で亢進した着床期ウィンドウから外れて移植されるのではないかと考えられる。胚盤胞の形成に至る分割期胚はタイムラブスモニタリングによってある程度特定することができることもあるが、分割の状態によっても影響を受け、単純に予想することは難しいこともある。

後の周期に胚移植することで着床率や妊娠率が改善することを考えると全胚凍結も考慮する必要がある

胚培養の際に5%酸素を導入して以来、胚の分割が促進されることを確認している。胚移植を遅らせることによって着床率や妊娠率の改善をもたらすことができるということから考えると、全胚凍結の有用性についてもさらに検討してみる必要がある。内膜の状態が正常な正倍数性の胚の移植でも妊娠に至らない一つの理由となっている可能性がある。凍結融解胚移植は外因性プロゲステロンで調整した胚と内膜の同調が得られる時期に移植することによって良好な成績も得ることができる。また、自然周期による凍結融解胚によっても良い結果が得られている。

プロゲステロン筋注では過剰なプロゲステロンの吸収が内膜の発育の速度を促進すると述べられている

ホルモン補充周期による移植がmodified natural cycleよりも優れているとする明解なデータは得られていないが、2つの選択肢において大きな違いがある。いくつかの後方視的研究はプロゲステロンの筋注法が優れているというデータを報告しているが、無作為対照試験で確認されたわけではない。プロゲステロン筋注法では血中プロゲステロンレベルは20ng/ml超になるが、そのような例では着床率は低下したと報告しており、過剰なプロゲステロンの吸収が内膜の発育の速度を促進するのではないかと考えられると述べている。プロゲステロンを投与する際に全身投与した場合と経腟投与した場合において個々の患者におけるパターンについて検討してみる必要があるのではないかと思われる。

抗リン脂質抗体や血中のNK細胞と成功率との間には相関は認められないと報告されている

非刺激周期においては子宮筋の収縮が抑制され、それが妊娠率を高め子宮外妊娠を抑制するのではないかと考えているものもいる。Lessy とScottは着床にかかわる全身的、また局所的な因子についてレビューしている。その中でビタミンDや甲状腺機能が結果に影響を与えるかどうかという点について検討した結果を報告している。また、彼らは免疫がかかわる要因に関する調査も行っている。その結果、抗リン脂質抗体や血中のNK細胞と成功率との間には相関は認められないと報告している。

正倍数性の胚を移植したとしてもなぜ着床や生児出産に至らないのかという点について考えてみる必要がある

正倍数性の胚を移植したとしても着床に至らないのか、あるいは生児出産に至らないのかということに関していろいろな可能性が考えられる。今まで検討されたいろいろな因子についてさらに検討を深め、さらに成功率を高める方法について検討してみる必要がある。

 

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