今回も引き続き、胚を培養する際の環境について解説してまいります。
まず培養は、インキュベーターという培養器を用いて行います。
これは、体外受精で卵子または胚を培養する装置のことであり、ここでの環境を最適な条件下に保つことは、妊娠の結果を左右するといっても過言ではありません。
現在、インキュベーターは様々な種類があり、その容量も器械によって異なります。
殆どの施設が大型のインキュベーターを使用していますが、開閉時に素早く環境を回復させるという観点からみると、小型であるほうが適切だと考えられています。
また、万が一のことを考えてインキュベーターは最低2台以上設置するべきであり、取り違えを防ぐため、1台1症例とするべきともされています。
以下は、培養する際の留意点を項目別に述べたものになります。
◆ 温度
体内と同様の環境下に保つ必要がありますが、インキュベーターの表示値を鵜呑みにせず、必要に応じて定期的に確認する必要があります。
◆ 湿度
培養液の蒸発による浸透圧の変化を避けるため、インキュベーター内の湿度は100%近くを保つ必要があります。
◆ pH
培養液のpHが正常に保たれているかどうか、定期的に確認することが最も重要となります。
◆ Co2ガス
卵子や胚は、体内では低酸素の環境下で存在しているため、培養時にも一定濃度のCo2ガスにより同様の状態を保っています。
また、使用前には必ずガスアナライザーを用いて測定するなど、定期点検が必要となります。
JISART実施規定では、毎日、ガスの残量や異常等のモニタリングの記録保持が求められており、供給するガスがなくなった場合の対応についても、明記するべきだとされています。
◆ 洗浄
インキュベーター内は高温多湿であり、カビや細菌が非常に繁殖しやすい環境となっています。
このためコンタミネーション(汚染)を防ぐため、最低でも月1回の洗浄が必要です。
上記の各項目について留意することはもちろんですが、培養する際の培養液は最も気をつけたい箇所になります。
こちらは、市販の培養液に品質証明書が添付してある場合も再度、浸透圧・pH・エンドトキシン等の値を再測定することをお勧めします。
* エンドトキシン
グラム陰性菌の細胞壁の外膜に存在しており、内毒素、リポ多糖などと呼ばれています。
細菌が死んで溶菌するときや、機械的に破壊された時などに遊離されます。
また、通常の滅菌では活性が失われないので、乾熱滅菌等の処理をする必要があります。
培養中のエンドトキシン濃度は、内毒素の指標及び細菌汚染のマーカーの一つとなっています。
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