不妊治療基礎知識

ARTについての基礎知識(6)〜胚培養時の環境についてのお話

今回も引き続き、胚を培養する際の環境について解説してまいります。

 

まず培養は、インキュベーターという培養器を用いて行います。

これは、体外受精で卵子または胚を培養する装置のことであり、ここでの環境を最適な条件下に保つことは、妊娠の結果を左右するといっても過言ではありません。

 

現在、インキュベーターは様々な種類があり、その容量も器械によって異なります。

殆どの施設が大型のインキュベーターを使用していますが、開閉時に素早く環境を回復させるという観点からみると、小型であるほうが適切だと考えられています。

 

また、万が一のことを考えてインキュベーターは最低2台以上設置するべきであり、取り違えを防ぐため、1台1症例とするべきともされています。

 

 

images-82

 

 

以下は、培養する際の留意点を項目別に述べたものになります。

 

◆  温度

体内と同様の環境下に保つ必要がありますが、インキュベーターの表示値を鵜呑みにせず、必要に応じて定期的に確認する必要があります。

 

◆  湿度

培養液の蒸発による浸透圧の変化を避けるため、インキュベーター内の湿度は100%近くを保つ必要があります。

 

◆  pH

培養液のpHが正常に保たれているかどうか、定期的に確認することが最も重要となります。

 

◆  Co2ガス

卵子や胚は、体内では低酸素の環境下で存在しているため、培養時にも一定濃度のCo2ガスにより同様の状態を保っています。

また、使用前には必ずガスアナライザーを用いて測定するなど、定期点検が必要となります。

 

JISART実施規定では、毎日、ガスの残量や異常等のモニタリングの記録保持が求められており、供給するガスがなくなった場合の対応についても、明記するべきだとされています。

 

◆  洗浄

インキュベーター内は高温多湿であり、カビや細菌が非常に繁殖しやすい環境となっています。

このためコンタミネーション(汚染)を防ぐため、最低でも月1回の洗浄が必要です。

 

 

上記の各項目について留意することはもちろんですが、培養する際の培養液は最も気をつけたい箇所になります。

 

こちらは、市販の培養液に品質証明書が添付してある場合も再度、浸透圧・pH・エンドトキシン等の値を再測定することをお勧めします。

 

 

*  エンドトキシン

グラム陰性菌の細胞壁の外膜に存在しており、内毒素、リポ多糖などと呼ばれています。

細菌が死んで溶菌するときや、機械的に破壊された時などに遊離されます。

また、通常の滅菌では活性が失われないので、乾熱滅菌等の処理をする必要があります。

 

 

培養中のエンドトキシン濃度は、内毒素の指標及び細菌汚染のマーカーの一つとなっています。

 

 

 

WEBはこちら⇒http://mimuro-cl.com/

 

Facebookはこちら⇒https://www.facebook.com/mimurocl

 

 

関連記事

  1. 不妊治療基礎知識

    IVMについてのお話

    通常のARTでは、成熟した卵子を用いて治療を行います。しかし、未成熟な…

  2. 不妊治療基礎知識

    卵巣予備能についてのお話

    ARTの成績に影響を及ぼすものは多々ありますが、今回はそのうち“卵巣予…

  3. 不妊治療基礎知識

    妊娠成立についての基礎知識

    前回までは、精巣と精子についてお伝えしましたが、今回は妊娠の成立につい…

  4. 不妊治療基礎知識

    ARTについての基礎知識(3)〜卵子の数と排卵についてのお話

    前回までは、精子の立場から受精するまでをお伝えしましたが、今回は卵子の…

  5. 不妊治療基礎知識

    胚または配偶子移植についての基礎知識(1)

    ARTにおいて胚移植(ET)とは、妊娠を左右する重要な位置を占めます。…

  6. 不妊治療基礎知識

    精巣と精子についての基礎知識(3)〜精子や精液のお話

    前回は精子の形成についてお伝えしましたが、今回は精子や精液の特徴につい…

  1. 不妊治療基礎知識

    異常妊娠についての基礎知識(2)
  2. 性感染症(STD)

    トリコモナス症についてのお話
  3. 不妊治療

    不妊治療に係る助成や休暇制度を導入する企業
  4. 不妊治療基礎知識

    ARTについての基礎知識(4)〜受精についてのお話
  5. 不妊治療基礎知識

    男性不妊についての基礎知識(5)
PAGE TOP