これまで体外受精に不可欠な、精子および卵子の採取法についてお話ししてまいりました。個々人にとって最適な方法を選択することは、不妊治療成功へ向けて重要な要因のひとつです。
しかし、それだけでは質の良い受精卵を得ることはできません。もうひとつ、重要な要素として“培養液”の選択があげられます。
今回は、不妊治療の鍵を握る培養液について詳しく解説してまいります。
培養液は受精卵の培養時に限定して用いられるものではなく、次のように様々なシーンで活躍しています。
<培養液が使われるケース(用途に応じて使う培養液の種類が違います)>
・ 卵子や精子を採取する場合
・ 精子の洗浄や凍結を行う場合
・ 胚の移植や培養、凍結を行う場合
さらに、培養液は妊娠をトータルサポートするだけにとどまらず、受精卵の着床率やその後の胎児の発育にも影響を及ぼすことがわかっています。各メーカーから実に多くの製品が販売されておりますが、全ての症例において良好な結果をもたらす万能品は存在しません。そのため日夜、努力が重ねられているのです。
不妊治療において重要な役割を担っている培養液ですが、1978年に世界で初めて体外受精児が誕生した際には通常の細胞培養液が用いられていました。
その後、革命的な培養液が2つ開発されることとなります。
ひとつは1985年にQuinnらによって開発されたHTFです。これは、卵管液の成分を参考にして作られたものであり、限られた成分だけが配合されていました。そのため、品質管理がしやすいことが特徴です。しかし、実際には卵管液の成分とは異なっていたため、その後、現在に至るまで種々の修正が加えられています。
胚の代謝は、発育のステージにより必要とされる栄養素が異なります。例えば、初期胚はあまりエネルギーが必要ではなく、過剰なエネルギーは逆に毒となる場合があります。
一方で、胚盤胞にまで成長すると、より多くのエネルギーを欲するようになるので、高エネルギー物質が必要となります。そのため、各発育時に要求される組成を考慮したSequential Medium が1998年にGardnerらによって開発されました。この培養液の誕生によって、今までよりも長期的な培養が可能となりました。
さらに、近年ではEmbryo Glue(エンブリオ・グルー)という培養液が注目を浴びています。これはヒアルロン酸もしくはフィブリン糊といった粘土の高い成分を大量に配合した製品であり、良好胚で妊娠へ結びつかなかったケースにおいて、着床率が上がったという報告があります。エンブリオ・グルーの有用性についてはまだ検討の余地がありますが、これからが期待される培養液のひとつといっても過言ではありません。
WEBはこちら⇒https://mimuro-cl.com/
Facebookはこちら⇒https://www.facebook.com/mimurocl