不妊治療基礎知識

着床前診断についての基礎知識(3)

従来、重い遺伝子疾患を抱えているが故に、同様の遺伝性疾児を出産する可能性がある場合は妊娠を躊躇するケースが見受けられました。
しかし、着床前遺伝子診断(PGD)の技術により、そのような場合でも安心して妊娠・出産に望めるカップルが増えたことは喜ばしいことです。また、妊娠後に行う出生前診断での結果を受けて、人工中絶の実施について悩むことも回避できるようになりました。
 
PGDは1990年に初めて報告された後、世界各国で急速に広まっていきます。それぞれの国や地域性の多様性を受け、対象となる遺伝子疾患も多岐に渡っており、今や数多くの子どもが誕生しています。
 
現在では、X連鎖性遺伝性疾患のみならず欠失や点突然変異など、これまで診断できなかった僅かな変化も発見することができるようになりました。
 
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一方、染色体異常や性別の検査を対象とした着床前スクリーニング(PGS)は、1993年にMunneらが細胞の染色体異常性について検討したのが最初になります。
 
PGSは、胚の質を評価した上で良好な胚を選別し、妊娠率の向上及び流産率の低下を目的とした技術です。
 
この流産率を低下させることができる背景には、自然流産に染色体数の異常が関わっているとする指摘があります。染色体数の異常は、流産を繰り返す場合に一定の確立で見られるため、PGSで予め胚を除外することで流産率を低下させることができるのです。
 
ただし、PGSはあくまでスクリーニングであり、染色体自体を変化させることはできないので、この部分については予め正確に伝えておくことが重要です。
 
日本でのPGSのスタートは遅く、2004年に慶応義塾大学で初めて重い遺伝子疾患を抱えているなど、条件を絞って実施されました。
これまで限られた場合に実施されてきたPGSですが、臨床研究の一環としてようやく門戸が広がる兆しが見え、これから日本での実施数も増えていくと思われます。
 
実施数が増えることで、習慣流産などの悩みを抱えているカップルを救うことができます。ですが、PGSは人工中絶の対象となる妊娠前の検査ではありますが、事前に胚を選別し、障がいを持つ可能性を排除することにつながります。
 
この部分については議論の余地があり、より高い倫理性が求められています。実際には有益な側面が多いPGDやPGSですが、手放しでその技術の進化を喜ぶだけではなく、導入にあたっては各種システムの整備が必要不可欠です。
 
また、実施にあたって事前のカウンセリングは必須であり、検査後の妊娠・出産のみならず、出産後の長期的フォーロー体制も継続していくことが望まれます。

 

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