今回は、ART実施のために採取された精子の精製法について解説してまいります。
採取された精子はそのままARTに用いられるわけではなく、精製して初めてARTに使うことができるようになります。
その方法はいくつかあり、必要に応じて組み合わせて行うこともあります。
● 密度勾配遠心分離法
〜精液から不純物を取り除き、精子を分離する〜
射精直後の精子は粘性が高くなっているので、しばらく静置して粘性が低くサラサラの状態になるのを待ちます。その後、まずは精液中に含まれている繊維や結石などを、フィルターで除去します。
ここまでが精液処理の前段階です。
こうして得られた精液ですが、これにはまだ精子だけではなくウイルスや白血球などが含まれています。通常の受精であれば、女性の頸管にある粘液が異物の混入を防ぐのですが、ARTの場合は直接受精させるので、これらの異物混入を許してしまうと感染の恐れがあります。
そのため、こちらも丁寧に取り除く必要があります。
方法としては、特殊な培養液を用いて遠心分離を行って、容器の下に蓄積した精子を回収します。
成熟した精子は細胞密度が高いため、ウイルスのみならず、奇形精子やすでに死んでしまっている精子とも分離することができます。
● swim up法
〜より運動性の高い精子を選別する〜
遠心分離にて選別した精子に、培養液をそっと加えて静置し、上のほうへ泳いできた運動率の高い精子を集める方法です。
質の良く、運動性の高い精子が回収できる反面、回収率には限界があり、全体の精子数が減るというデメリットもあります。
このように、より安全にARTを行うためには卵子だけではなく、良好な精子も必要不可欠です。そのため、種々の手段を用いて選別するわけですが、そこにはヒト精子の特徴も大きく関わってきます。
その特徴とは、第2減数分裂以後に生じた精子のDNA損傷は修復されることなく蓄積され、特に不妊男性ではその傾向が強いという点です。
この特徴を踏まえ、精子選別は密度勾配遠心分離法だけではなくswim up法も組み合わせて行うことでより安全性を高めているのです。
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