近年、不妊治療を受ける方が増えにつれて胚移植するケースも増加の一途を辿っていますが、より受精率を上げるには“胚や卵子の質”も大きく関係してきます。
このため、より質の良い胚を評価する方法として現在では、形態観察にて評価を行っています。この方法が用いられている理由は、簡単で迅速であること、そして何より無侵襲的に行うことができるためです。
しかしながら、この評価方法は評価基準が客観性に欠け、観察者の主観によるところが大きいことも事実です。そのため、厳密に評価することが難しいことがデメリットとなります。
このような状況を受け、近年では最も高感度で非侵襲的に単一胚の呼吸量を測定できる“電気化学呼吸測定技術”による胚クオリティー評価に対する研究がなされています。
今回は、この評価法に関する研究をご紹介していまいります。
<方法>
形態観察にて良好な胚では、ミトコンドリアがよく発達していることを利用し、電気化学的計測法でその呼吸量を測定することで、細胞の代謝活性能解析や胚の質を評価します。
*電気化学的計測法
プローブ電極による酸化還元反応を利用し、局所領域における生物反応を電気化学的に高精度で検出する方法です。
走査型電気化学顕微鏡scanning electrochemical microscopy (SECM) を用いることで、細胞や胚の酸素消費量を無侵襲的に測定することができることが特徴となります。
電気化学的計測法を用いることで、胚にほとんど損傷を与えず、非侵襲的に呼吸量を計測できることが最大のメリットになります。
また、非常に感度の高い計測が可能であるため、1細胞レベルでの機能解析や呼吸量の測定も行うことができます。
実際、ウシの胚を用いて測定を行ったところ、呼吸量の増加とミトコンドリアの発達が一致することが証明され、この方法の有効性が実証されています。
また、染色体や生殖能力などにおいても異常は見られず、その非侵襲性や安全性も現在のところ問題ありません。
ウシのみならず、ヒトの胚においても同様の現象が見られるだけではなく、呼吸活性が最も高い胚を実際に移植した場合には妊娠率が高く、流産率が低いという研究結果も出ています。
形態的評価法と、胚の呼吸代謝活性の測定を併用することで、今後はより厳密で優れた質の評価を行う事が出来、妊娠の成功率上昇が期待できます。
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