妊娠を希望するカップルにとって気がかりなのは、人生においてどの時点で妊娠出産というイベントを迎えるかということなのではないでしょうか。それはどちらかというと女性側がより気にかかる事項であり、その理由として年齢と妊娠率の関係性が伺えます。
これまで何度か取り上げてきましたが、身体の他の細胞と同じように卵子自体も加齢とともに老化が進んでいきます。そして、ある年齢に達した以降は妊娠率が急速に低下していくのです。
目に見えやすく顕著な例は閉経ですが、それ以前でも妊娠に結びつきにくい質の低下した卵子を抱えた状態で、不妊治療を続けている場合も少なくないのです。
近年は初婚年齢の上昇や女性のキャリア進出等の事由によって、出産に挑もうとする年齢自体も上がっています。そのため、必然的に若い頃よりも妊娠率が低くなり、不妊に悩むカップルも多くなっているのです。
なぜ年齢の上昇と共に卵子の質が低下してしまうのか、いくつかの原因が考えられます。そのうちのひとつとして、細胞内に数百と存在するミトコンドリア内にあるDNA、つまりミトコンドリアDNAの変異や染色体の異常が考えられます。
変異してしまったり、異常をきたしたミトコンドリアは正常な機能が失われてしまいます。さらには自己修復機能の不具合により、壊れやすく直りにくい状態へと陥っていきます。
ミトコンドリアとは、わたしたちの身体が活動するためのエネルギー産生や呼吸など生命活動の根幹に関わる器官になります。従って、ここが上手く機能しないと細胞レベルから体全体に支障をきたすことになるのです。
もちろん、このような現象は短期間にすさまじい成長を遂げる、卵子や受精卵にとっても例外ではありません。
このような状態から脱却するため、1977年にある試みがなされました。
その方法とは、ICSI実施時に精子と提供された若い卵子の一部を注入する方法です。このとき注入するのは細胞質の一部であり、核は自身のものなので実質的に卵子提供とは勝手が違います。
つまり、卵子提供と異なり遺伝子上はパートナー同士のものであるということが言えるのです。
しかし、これは後の研究で判明したのですが、この方法には問題となる部分が存在していました。
この方法で出生した場合は、老化卵子由来のミトコンドリアと提供された若い卵子由来のミトコンドリア、そのどちらも後々まで存在していることが判明したのです。
通常、異なる遺伝情報をもつミトコンドリアが共に存在しえないため、これらがどのような影響を及ぼすのが未だに解明されていません。そのため、米国ではこの治療法を実施する際に、事前許可の必要性を求めるなど規制がかかるようになりました。
先に述べたような問題点がクリアされない限り、卵細胞質移植は臨床応用へ発展しにくい技術です。しかし、実施されたケースでは明らかに妊娠率の向上が認められたため、これからの研究を大いに期待することができます。
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