不妊治療基礎知識

胚または配偶子の凍結保存についての基礎知識(1)

ART実施に際しては、実に多くの素晴らしい技術が集約されています。
これまで紹介したものに加え、これからご紹介する凍結保存も妊娠成立を左右する重要な技術です。
凍結保存する対象は、精子や卵子などの配偶子や胚になりますが今回は、需要の多い胚の凍結保存について解説してまいります。

 
 

そもそも、凍結保存とはどのようなものなのでしょうか。

 

文字通り胚を凍結し、保存して適した時期に融解して着床へと導く手法です。
ただし、命を扱う行程になりますので、やみくもに凍結させるわけにはいかず、正常な妊娠や出産、そして最終的には私たちと同じように健康な生活を送ることができるよう保存することが前提となります。

 

そのために一番気を使わなければならない点は、胚の組織内に含まれる液体が結晶化しないよう、非常に低い温度まで下げておくことです。

 

なぜ、結晶化してしまってはいけいのでしょうか。
それは、液体よりも固体の体積が大きいため、細胞の中で結晶ができると細胞内に亀裂が生じ、破損してしまうからです。

 

従って細胞の損傷を防ぐために、凍結保護液を用いて細胞を予め濃縮して小さくしておくという処理を行います。

 
 

上記の処理後は温度を下げる工程になるのですが、どこまで下げるべきかという疑問も生じるかと思います。
これについては、一般的に-130℃以下であれば問題なく保存できるとされています。しかし、通常は温度を下げるために取り扱いしやすい液体窒素を使ことになるので、液体窒素が存在する-196℃まで低下させることになります。

 
緩慢凍結法
 

胚の凍結保存には、緩慢凍結法とガラス化法の2種類があるのですが、それぞれ始まった時期は異なっています。
先に始まったのは緩慢凍結法であり、その始まりは1972年に遡ります。このころはまだマウスを用いた研究にとどまっていましたが、その後、研究が進められ1980年代後半に差し掛かる頃、初めてヒトでの出産に成功しました。

 

一方のガラス化法は1985年に開発された方法です。
緩慢凍結法と比べて厳密な処理は必要となりますが、適切に行うことができればより保存性が高まるということで、近年増えつつある手法です。

 
 

不妊治療における救世主とも言うべき胚の凍結保存には、次のような利点や欠点があることがわかっています。

 

胚を凍結保存するメリット
・毎回、採卵しなくて済むので身体的、精神的負担を減らすことができる
・子宮内膜が薄い場合など、状態をみて移植する周期を選択することができる
・一度に移植する胚の数を減らすことができ、多胎を未然に防ぐことができる
・OHSSの場合は、移植を見送ることができるので重症化を避けることができる

 

デメリット
・胚がダメージを受ける可能性がある
・胚を凍結保存、管理、融解するためのコストがかかる
・凍結保存する際の薬液が、透明帯の硬化等の悪影響を及ぼすことがある

 
 

このようにメリットが多い胚の凍結保存ですが、気になるのは保存可能な期間です。
理論的には半永久的に保存が可能と言われていますが、後々トラブルになる場合も考えられます。そのような事態を防ぐためにも、予めパートナー間や医療機関とよく話し合っておくことが大切です。

 

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