排卵障害の種類と検査について

女性側の不妊の原因として最も高い割合(約30%)を占めるのが排卵障害です。排卵障害と書くとなんだか大変な疾患のように感じてしまいますが、簡単に言うと「排卵に関与するホルモンが正常に機能していないために妊娠に至らない」というものです。

その種類は下記のように分けることが出来ます。これらは密接に関連しているために必ずしも1つのものと捉えることが出来ないものも多いようです。

排卵障害の種類と関わるホルモン

  1. 視床下部性

    下垂体のコントロールを行なっている視床下部のホルモン分泌異常により、下垂体に影響を与えてしまう。
     関わるホルモン → GnRH(ゴナドトロピン放出ホルモン)

    ゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)放出ホルモン gonadotropin-releasing hormone(GnRH)とは?

    GnRHは10個のアミノ酸で構成されるペプチドホルモンです。

    視床下部にあるGnRH産生細胞で産生され、下垂体門脈に律動的に分泌されます。この作用で下垂体よりFSH,LHが律動的に分泌されます。

    GnRHの血中半減期は2~3分と極めて短く、この律動的に分泌されたGnRHに同期して下垂体からゴナドトロピンがパルス状に分泌されます。

    このパルス状分泌の間隔や振幅は年齢や月経周期の時期により異なります。

    卵胞期では約1~2時間に1回で比較的小さな振幅であるが、排卵期には頻回で振幅が大きくなります。黄体期では3~4時間に1回と周期は長くなり、振幅も大きくなります。

  2. 下垂体性

    下垂体のホルモン分泌異常。FSHやLHの分泌不全によって、卵子が育たない、卵巣からの排卵がうまくいかない状態。
     関わるホルモン → FSH(卵胞刺激ホルモン)LH(黄体化ホルモン)

    卵胞刺激ホルモン follicle stimulating hormone(FSH)とは?

    FSHは女性の場合

    1. 卵胞の発育
    2. エストロゲンの生成の促進
    3. 月経周期のコントロール

    FSHは男性の場合

    1. 睾丸の発育
    2. 精子の生成の促進

    LH(黄体化ホルモン)とは?

    脳下垂体から分泌され、卵胞を成熟させ、排卵直前に一気に分泌され排卵を促します。(LHサージ)排卵後の卵胞を黄体に変化させ維持するように働きます。

  3. 卵巣性

    卵巣から分泌されるホルモンの異常。エストロゲンは子宮頚管粘液の分泌、プロゲステロンは子宮内膜の肥厚に深く関わっています。
     関わるホルモン → エストロゲン プロゲステロン

    エストロゲン
    エストロゲン(米: Estrogen, 英: Oestrogen, 独: Estrogene)は、ステロイドホルモンの一種。一般に卵胞ホルモン、または女性ホルモンとも呼ばれます。

    エストロゲンにはエストロン estrone(E1), エストラジオール estradiol(E2), エストリオールestriol(E3)の3種類があり、エストラジオールが最も活性が高く、エストリオールは最終代謝産物です。

    卵巣でのエストロゲン産生は、莢膜細胞でコレステロールを前駆物質として開始し、LHの作用でアンドロゲンが合成され、それが顆粒膜細胞に移動し、FSHの作用下にアロマターゼにより芳香化を受け、エストロゲンが産生される。これをエストロゲンの2細胞説(two cell, two gonadotropin theory)といいます。

    エストロゲンの作用は下記の通りです。

    1. 膣に対する作用
      膣上皮の増殖、多層化。表皮の角化作用。
    2. 子宮に対する作用
      子宮頸管粘液の増加、粘度の低下。子宮内膜の増殖。子宮筋の肥大・増殖。オキシトシンに対する感受性の亢進。
    3. 視床下部−下垂体に対する作用
      ポジティブフィードバック作用およびネガティブフィードバック作用。

    異常な場合に疑われる病気
    高値…エストロゲン産生腫瘍、先天性副腎酵素欠損症など
    低値…卵巣機能不全、黄体機能不全など

    プロゲステロン
    プロゲステロンとは、黄体期(月経周期でいうと排卵後の期間、基礎体温でいう高温期)に分泌される女性ホルモンで、別名、「黄体ホルモン」と呼ばれる妊娠に深く関わるステロイドホルモンです。

    排卵後に卵胞が黄体化すると、黄体からプロゲステロンが分泌されます。黄体では 3β—ヒドロキシステロイド—デヒドロゲナーゼ活性が高く、大量のプロゲステロンを分泌します。

    プロゲステロンの作用は下記の通りです。

    1. 視床下部にある温熱中枢を刺激して体温を上昇させる。
    2. 子宮内膜に対しては、分泌期像に変化させる。

    異常な場合に疑われる病気
    高値…先天性副腎過形成、クッシング症候群、副腎がんなど
    低値…卵巣機能不全、黄体機能不全など

  4. 高プロラクチン血症

    妊娠していないにもかかわらず、なんらかの理由でプロラクチンが過剰に分泌されてしまう疾患。月経や排卵が抑制されてしまうので、排卵障害をひきおこします。また、受精卵の着床障害をひきおこすこともあります。
     関わるホルモン → プロラクチン(乳汁分泌ホルモン・下垂体前葉から分泌)

    プロラクチン(乳汁分泌ホルモン)とは?

    プロラクチンは脳の下垂体前葉という6種類のホルモンを作り出す部分から出るペプチドホルモンの1種です。

    作用は下記の通りです。

    1. 乳腺の発達を促進し、乳汁を分泌させる。
    2. 母性本能に関連していると言われている。

    授乳期間中はこのプロラクチンの血中濃度は上ります。子供の乳首への刺激でプロラクチンの分泌は増します。この期間はその高い血中濃度が母親の排卵を抑制します。

  5. 多のう胞性卵巣症候群

    通常は赤ちゃんの卵が入っている卵胞は月に1つずつ成熟しますが、その卵胞が卵巣内にいくつもできてしまうことです。卵胞はたくさんあってもその中身は嚢胞状に変化してしまい、1つ1つは成熟しにくくなっています。多嚢胞性卵巣の9割の人に排卵障害があるといい、また排卵障害の人の20~40%が多嚢胞性卵巣症候群であると言われています。無月経や不正出血、男性ホルモン過剰(にきび、多毛)、肥満などの症状が特徴的です。
     関わるホルモン → インシュリン

  6. 甲状腺ホルモン異常

    甲状腺刺激ホルモン過剰の状態はどのような内分泌的影響があるかというと、まずカラダ全体のホルモンバランスが崩れます。それに伴い、規則正しい性関連ホ ルモンが異常をきたす事になります。よって月経不順や無月経になることも珍しくありません。それらの結果、妊娠しにくい状態になるということです。
     関わるホルモン → 甲状腺ホルモン

上記のように種類を見ていくと様々な原因があることがお分かりになられると思います。

でも、ここで知っておいて欲しいのはホルモンと月経周期と排卵と妊娠はすべて連動しているということです。種類は治療上の便宜を考えて、上記のように分けて分類していますが、単一原因のものは少ないと考えられます。

なぜこのような事が起きるのか?という原因については諸説がありますが、ほとんどが原因不明です。ストレスであったり、生活習慣であったり、遺伝的なものであったり、様々な要因が絡んでホルモンの分泌不全を起こしていると考えられています。

ホルモン検査と超音波検査について

クリニックに行って、必ず行なう検査はホルモン検査超音波検査です。

ホルモン検査は血液中の生殖に関係する様々なホルモンの値を測って、排卵や着床の妨げになりそうなものはないかを調べる血液検査です。

超音波検査は卵巣の状況がどのようになっているのかを調べます。特に卵胞の様子が一目瞭然ですので、多嚢胞性卵巣症候群の発見に役立ちます。

ホルモン検査の項目と計測時期は下記の通りです。

調べておきたいホルモン値には、それぞれ測定に最適な時期があります。

月経3~4日目くらい(卵胞期初期)
 
→ 黄体化ホルモン(LH)
  卵胞刺激ホルモン(FSH)
温期の中頃(黄体期中期)
 
→ 卵胞ホルモン(エストロゲン)
  黄体ホルモン(プロゲステロン)
どの時期でもOK
 
→ 乳汁分泌ホルモン(プロラクチン)
  甲状腺ホルモン

各ホルモン検査の値から分かる事は下記のことです。

  1. LH、FSHともに低い

    視床下部もしくは脳下垂体の機能に問題があります。
    GnRHホルモン負荷試験でどちらの方に原因があるかを調べる事が出来ます。

  2. FSHはほぼ正常だが、LHが高い

    多嚢胞性卵巣(PCOS)の可能性があります。
    さらに、超音波検査で卵巣に多くの卵胞が確認されれば、PCOと診断されます。

  3. FSHの基礎値が10mlU/mlよりも高い

    卵巣の機能に異常があります。
    20mlU/ml以上になると、妊娠が困難な状況と判断されます。

  4. 黄体期中期に測定した黄体ホルモンが10ng/ml以下

    黄体機能不全と診断されます。
    この状態が続くと着床障害や流産の原因になります。

  5. プロラクチン値が高い

    高プロラクチン血症と診断されます。
    値が異常に高いときには、MRIで脳下垂体に腫瘍がないかを調べます。

  6. 甲状腺ホルモン値の異常(多くても少なくても)

    排卵障害、着床障害、流産などの原因になります。
    甲状腺機能に異常が見つかった場合は、甲状腺治療専門医との連携が大切です。

解説

女性の不妊原因の中で最も頻度の高い排卵障害も様々な種類があることをご理解いただけたと思います。クリニックではこれらの身体の状況を把握するために超音波検査や血液検査(ホルモン検査)をしているのです。

ホルモン検査はその時の身体の状態や時間によっても大きく変動する事がありますので、一度調べただけで一喜一憂しない方が良いと思います。なぜなら、検査をした時の身体の状態はその断面であり、その人のホルモンの状況の一部分を切り取ったデータにしか過ぎません。

よって、何回か検査をしていくことが身体の状況把握には必要だと言えます。

排卵障害の中でも多いPCO(多嚢胞性卵巣)の方は生活習慣、甲状腺ホルモンの方はストレスがきっかけになっていることが多いように感じます。また、睡眠不足も少なからずホルモンバランスに影響を与えていると思います。

もちろんクリニックでの治療も大事ですが、検査値が良くなかった場合、自分の生活習慣を見直してみることが、それらの異常を正常化させることに結びつくように感じます。


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