排卵障害の治療法について

排卵誘発剤について

ここでは排卵障害の治療についてお話をしていきたいと思います。
排卵障害には視床下部性排卵障害/下垂体前葉性排卵障害、高プロラクチン血症といった脳のホルモン分泌の異常によるものやPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)のような疾患がメインの症状になります。

治療は、薬物療法タイミング療法が中心になります。
薬で排卵誘発を行いながら、排卵のタイミングでSEXをして頂くという治療法です。

それでは、薬物療法のメインであるクロミフェン療法とHMG-HCGについて解説をしていきたいと思います。

視床下部性・下垂体性排卵障害
「クロフェン+タイミング療法」を選択される事が多いです。これで3~6ヵ月ほど様子を見て、もしうまくいかなければ「HMG(FSH)-HCG療法」に移行することになります。

検査値で明確に原因が分からなくても治療を開始して、妊娠すれば排卵障害だったのだなと分かるので、原因が特定出来なくても実施するパターンが多いです。

クロミフェンとは?

経口(口から服用する)排卵誘発剤をクロミフェン製剤といい、その中でもクロミッド(塩野義製薬)は最も広く処方されている薬です。発売から40年以上経過している古いお薬です。クロミフェンにはクロミッドの他にも、セロフェン、オリフェン、フェミロンなどの名前の薬がありますが、すべて同じ成分で名前が違うだけです。

クロミフェンは、視床下部の脳下垂体に働きかけ卵胞刺激ホルモン(FSH)や黄体形成ホルモン(LH)の分泌を促します。どちらかというと卵胞を育てる力が強い薬です。

経口投与が出来て、価格もお手頃なので不妊治療の初期には必ずと言っていいほど使われる薬です。

クロミフェンを長く使うと副作用が出てくるので注意が必要です。具体的に言うと頸管粘液の減少、子宮内膜が薄くなるといった「抗エストロゲン作用」の副作用が起きやすくなります。よって、一定の期間試してみて効果がない時には次へのステップへ進む必要性があります。特に不妊を専門にされていない婦人科や内科の場合はクロミフェンを投与しておけば妊娠するかも・・・という目的で漫然と使われるケースも多いのでその点は要注意です。

HMG-HCG療法とは?

タイミング療法+クロミフェンで妊娠しなかった場合、次のステップに進むとHMG-HCG療法に移行します。HMGの解説は下記に書いておきますが、この薬剤には卵の入った卵胞を育てる作用があります。それをこのホルモンで育てて、卵胞の大きさが約20~22mmになるとHCGを投与し、排卵を促す治療法です。

hMG(ヒト閉経ゴナドトロピン)とは、卵巣を刺激して卵胞を成熟させる注射薬です。商品名ではHMGフジ、HMGフェリングなどがあります。また HMG製剤でも、HMGの中からできるだけLHを取り除いたものをFSH製剤と呼んでいます(フォリルモンPなど)。

最近ではHMGだけではなく、その中に含まれるFSH(卵胞刺激ホルモン)だけをバイオテクノロジーで抽出した遺伝組み換え型薬剤も発売されていますので、そちらを活用されるケースも増えてきています。

人間のカラダの中で行われているホルモンの活動を外からホルモンを加える事により、再現し、卵胞の成長と排卵を促す治療法と言えます。よって、カラダの中のホルモンを一旦リセットするためにGnRHアナログ(ブセレリン・ナサニール)という点鼻のお薬を使う事も多いです。

副作用について

排卵誘発剤の副作用は3点注意しておくと良いかと思います。

  1. OHSS(卵巣過剰刺激症候群)

    HMG-HCG療法の副作用で最も怖いのがOHSS(卵巣過剰刺激症候群)です。OHSSの発症頻度は約10%~20%です。場合によっては重症化して卵巣が腫れ、20cmぐらいになり腹水がたまることもあります。

    これらはよくわかっている副作用なので、過剰に心配せずにきちんと自分の体の状況を当院スタッフに伝えておけばまず大丈夫です。

    ただし、PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)で排卵誘発により卵巣内にいくつもの卵胞が育っている場合はOHSSになりやすいのでその周期のHCG投与は中止ることが多いです。HCGを打たなければOHSSにはならないからです。

  2. 多胎

    二つ目の副作用は多胎です。排卵誘発で卵胞が複数発育していれば多胎の可能性があります。じゃあ、多胎がなぜ副作用、と言われる方もいることでしょう。双子ちゃんはあこがれと言われている方も多いと思います。

    しかし、実は多胎は2つの側面で副作用と言われております。

    1. 子供の数が多ければ多いほど母子共に妊娠中毒症等の合併症の危険性が飛躍的に上昇
    2. もし無事に生まれたとしてもその後の経済的問題とケア的問題の発生
  3. アレルギーの問題

    HMG製剤は尿由来のホルモン剤です。尿からホルモンを抽出するのです。だから夾雑なタンパク質が含まれているのでアレルギー反応を起こしやすいと言われています。注射時の強い痛み、注射した部位の発赤や腫れ、不定愁訴など起こすケースもよく見られます。

    しかし、効き目の面でHMGの効果が勝ると考えられるケースも多く、この選択はその都度、カラダの状況を見て、医師が決定致します。アレルギー反応が強い場合はFSH製剤に切り替えるなどの対処も必要になります。

排卵障害治療や原因不明の不妊治療で活用されるクロミフェンやHMG-HCG療法などの排卵誘発法は不妊治療の中でも保険医療でカバーされる治療です。だから意外に安価に治療できるものです。

そして、実はタイミング療法とこれらの薬物療法の組み合わせは不妊治療で最も妊娠率の高い治療法なのです。

これらの薬物治療はすでに40年以上使われ、洗練されてきた治療法です。副作用も効果も我々は熟知しております。
ホルモン製剤というと印象的に「作用が強いのでは?」とか「副作用が怖い」という方が多いですが、過度に怖がらずに受診して頂くと良いかと思います。妊娠する確率がぐんと上がると思いますよ。


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